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「半月板が割れているので手術しかない」と言われた65歳女性

4週間で日常生活へ戻った右膝痛の症例

65歳女性。

減量のために運動を始め、長時間で約1万歩歩いた翌日から、右膝の外側に強い痛みと腫れが出ました。

病院ではレントゲン検査のあとMRIを撮影し、「半月板が割れている」「手術しかない」と説明を受けたそうです。

しかし、ご本人はご主人と仕事をされており、家庭での役割もあります。

「長期間休むことが難しい。できれば手術はしたくない」

という希望があり、発症から約1週間後に来院されました。

【写真①:初回来院時】
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来院時は、歩くことだけでなく日常生活そのものが難しい状態でした

初回来院時の痛みは、10段階で8〜9程度。

右脚へ十分に体重を乗せられず、杖を使いながら右脚を引きずるように歩かれていました。

さらに、

・起き上がる
・椅子から立ち上がる
・車へ乗り降りする
・普通に歩く

といった日常生活も難しい状態でした。

右膝は、痛みのため完全に伸ばし切ることができません。

確認すると、

・右膝外側の関節裂隙に圧痛
・軽度の腫れ
・膝をひねった際に軽度の痛み
・McMurrayテストなどは陰性
・明確なロッキングはなし

という状態でした。

【動画①:初回歩行】


MRIで半月板断裂があっても、画像だけで今の状態を決めつけません

半月板は、膝関節の中で荷重を分散したり、関節の安定性を助けたりする組織です。

一方、中高年ではMRIを撮影すると、膝の痛みがほとんどない人にも半月板の損傷が見つかることがあります。

つまり、

「MRIで半月板が切れている」
=
「今の痛みがすべて、その断裂だけから起こっている」

とは限りません。

そこで今回は画像だけではなく、

・ロッキングがあるか
・腫れはどの程度か
・体重をかけられるか
・膝を曲げ伸ばしできるか
・どう歩いているか
・必要な筋力が使えているか
・股関節や体幹が動いているか

まで確認しました。

【図①:半月板の模式図】
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今回、特に注目したのは「膝に負担が集中する身体の使い方」でした

歩行を見ると、つま先が内側へ向いてくる特徴的な動きがありました。

また、股関節周囲、とくに腸腰筋部の緊張が非常に強く、必要な筋力もうまく使えていない状態でした。

さらに経過をみる中で、腰椎・胸椎の動きの悪さも確認しました。

そのため、

「膝だけの問題」ではなく、身体全体の動きの中で右膝へねじれや荷重が集中している可能性がある

と考えました。

そしてもう一つ。

この方は減量目的でトレッドミルを購入し、急に運動量を増やしていました。

トレッドミルそのものが悪いと考えたわけではありません。

ただ、

身体がその運動量を受け止める準備が十分でない状態で、急に歩行量が増えたこと

は、今回の膝痛を強くした負荷要因の一つではないかと考えました。

【写真②:初回歩行】


サポーターで膝の「ねじれ」を調整すると、その場で歩きやすさが変化しました

初回は、痛みの強い膝自体へ強い施術をすることはほとんどありませんでした。

まず股関節周囲、とくに腸腰筋部の緊張を整えました。

そして、

・テーピング
・上下のベルトでねじれを調整できるサポーター

を使い、膝の回旋方向を補助しました。

すると、サポーターを装着した時点で歩行時の痛みがかなり改善しました。

この変化から、

半月板の画像所見だけではなく、膝にかかるねじれや荷重のかかり方を変えることで症状が変化する余地がある

と判断しました。

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1週間ごとに状態を確認し、4週間で通常の日常生活へ

初回

股関節を中心に施術。

安静と、右膝へ必要以上に体重をかけないことをお伝えしました。

1週間後

痛みは約50%改善。

杖を使わず歩けるようになりました。

2週間後

約70%改善。

股関節に加え、動きの悪かった腰椎・胸椎への施術も行いました。

3週間後

約80%改善。

歩行指導や筋力トレーニングを開始。

胸郭の動きを作る運動や、大腿四頭筋を中心とした個別のトレーニングをお伝えしました。

4週間後

約90%改善。

痛みは10段階で1〜2程度。

仕事場の2階と自宅の1階を行き来する階段も、通常通り上り下りできるようになりました。

合計4回の来院で卒業となりました。

初回
NRS 8〜9/杖歩行
↓
1週間
約50%改善/杖なし
↓
2週間
約70%改善
↓
3週間
約80%改善
↓
4週間
約90%改善/NRS 1〜2/階段可能


しかし、痛みが取れたから「半月板が治った」わけではありません

ここが、この症例で一番お伝えしたいところです。

4週間で日常生活は大きく改善しました。

しかし、

「痛みが減った」
=
「半月板そのものが元通りになった」

という意味ではありません。

半月板の損傷は、将来的な軟骨の変化や変形性膝関節症の進行と関連することが報告されています。

だからこそ、

「今は痛くないから大丈夫」

で終わるのではなく、

なぜ膝へ負担が集中したのか?

まで考えることが重要です。

この方の場合は、

・歩き方
・股関節や体幹の動き
・膝を支える筋力
・運動量の増やし方

などを見直していくことが、これから膝を守るために重要だと考えました。


卒業の基準は「痛みがゼロ」だけではありません

今回の卒業基準は2つでした。

①以前の生活の約9割まで戻っていること

そして、

②自分の膝がどのような状態なのか、今後何に気をつければよいのかをご本人が理解していること

です。

4週間後にも、体重をかけた際に少し不安感や軽い痛みは残っていました。

それでも、

「自分の膝について理解できている」
「必要な運動を自分で続けられる」
「日常生活へ戻れている」

ところまで進んだため、卒業としました。


患者さんからいただいた言葉

「病院ではどうなっているか教えてくれるだけで、どうしたらいいかまでは分からなかった。

先生は『こうしたらいいよ』『こうなっていくよ』としっかり教えてくれるので安心できました。

実際に言われた通りになっていくので、余計に安心することができました」

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症例問題

痛みが9割改善したら、この膝はもう「治った」と考えてよいでしょうか?

A. 痛みがほぼないので、今後は膝について考えなくてよい

B. 痛みが減ったので、半月板も元通りになったと考える

C. 生活は戻ってきたが、膝へ負担が集中した背景まで見直す必要がある

D. MRIで断裂があるので、痛みがなくても必ず手術が必要

正解:C

痛みが改善したことと、半月板が元通りになったことは同じではありません。

また、MRIで半月板断裂が見つかったからといって、画像だけで痛みの原因や手術の必要性を決めることもできません。

症状の経過や、

・ロッキング
・可動域
・荷重
・歩行
・筋力
・生活への影響

などを合わせて考えることが大切です。

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こんな場合は、保存的に様子を見続けず医療機関へ

次のような場合は、整形外科など医療機関での評価を優先します。

・膝がロックし、曲げ伸ばしできない
・強い痛みや腫れが改善しない
・まったく体重をかけられない状態が続く
・強い膝崩れがある
・発熱や著明な熱感がある
・外傷後に急激な腫れや変形がある

保存的に経過を見る場合でも、症状が悪化したり改善が止まったりした場合には、再評価が必要です。


半月板断裂=すぐ手術、でもありません

痛みが取れた=すべて解決、でもありません

今回の方は、病院で半月板断裂と説明され、手術を勧められていました。

しかし、ロッキングなどの状態を確認しながら、膝だけではなく、股関節・体幹・筋力・歩行まで含めて状態をみていくことで、4週間で通常の日常生活へ戻ることができました。

ただし、この症例から

「半月板断裂なら手術をしなくても大丈夫」

と一般化することはできません。

大切なのは、

画像だけで決めつけないこと。

そして、

痛みが取れたところで終わらず、なぜその膝に負担が集中したのかまで考えること。

だと考えています。

半月板損傷や変形性膝関節症と診断され、

「手術しかないと言われたけれど、今の自分の状態をもう少し整理したい」

「痛みが減った後、何をしたらいいのか知りたい」

という方は、必要な医療評価を受けながら一度ご相談ください。

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