48歳男性。朝起きてから左坐骨神経痛が非常に強く、午前中は仕事ができない状態でした。午後14〜15時頃には痛みが軽くなるものの、そこまで楽になるために午前中に2〜3時間歩き続けていたとのことです。MRIでは腰椎の隙間が狭く、手術の説明を受けたとして来院されました。
初回来院時の立位姿勢
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来院時は、午前中の痛みで仕事ができない状態
本人によると、L4/5の狭窄とL3/4のすべり症を指摘され、痛み止めの注射、鎮痛薬、神経を鈍くさせる薬、週1回の牽引療法を受けていました。初診は15時30分頃で、その時点では痛みが出にくく、歩行による痛みの再現は確認できませんでした。歩行では股関節が十分に伸びず、前のめりでお尻を後ろへ引く姿勢があり、腕を後ろへ引いて胸を張る代償もみられました。
画像所見だけで、現在の症状を決めつけない
SLRは左90度で陽性、左L4・L5領域に感覚障害があり、左母趾背屈力と足関節背屈力の低下を確認しました。腱反射は正常で、股関節の明らかな可動域制限はありませんでした。画像所見は大切な情報ですが、今回の症状の時間帯や歩くことで軽くなる経過を含め、画像だけで現在の状態のすべてを説明できるとは限らないと考え、姿勢・歩行・神経学的所見・生活背景を合わせて確認しました。
歩行で注目したのは、股関節伸展不足と代償動作
股関節の他動可動域には明らかな制限がない一方、歩行では股関節を十分に伸ばせていませんでした。長時間座って過ごすことが多い生活の中で、股関節を伸ばさない使い方が習慣化している可能性を考えました。これは現時点の仮説であり、症状の原因を一つに断定したものではありません。
初回は腸腰筋周囲への対応と歩き方を提案
初回は腸腰筋周囲を緩める施術を行い、鍼灸は使用していません。セルフケアとして、午前中に腸腰筋周囲を緩めてから行動を始めることを提案しました。歩行では、前傾姿勢を無理に起こそうとせず、歩幅を少し広げるイメージを伝えました。2回目以降は坐骨結節上部付近の圧痛を確認し、深層外旋六筋や梨状筋などの緊張を緩める対応を行いました。
翌朝の変化から2週間後の仕事復帰まで
初回施術の翌朝、本人から朝の痛みがかなり楽だったとの報告がありました。午前中に2〜3時間歩かないと楽にならない状態は2〜3回目頃まで続きました。その後、約1週間後から本人は薬を使わなくなり、2週間後に仕事へ復帰しました。左下肢の強い冷感も仕事復帰と同じ頃に収まったとのことです。これらは今回の経過であり、同じ対応で同様の変化を保証するものではありません。
改善した所見と、残った所見を分けて確認
左母趾背屈力と足関節背屈力は初回施術後から改善し、2回目以降はしっかり戻っていました。一方、左L4・L5領域の感覚障害は4回目終了時点でも残っていました。痛みや生活が改善しても、残っている神経学的所見を分けて確認することが大切です。
歩行の変化を比較
初回と経過時の歩行比較(側面)
冷感は、薬剤・神経・血管の可能性を一つずつ確認
左下肢の強い冷感については、当初は薬剤の影響も考え、その後は血管性要因も鑑別候補としました。後脛骨動脈と足背動脈の拍動は触知できましたが、この所見だけで血管性要因を除外せず、神経や疼痛に伴う反応も含めて多角的に考えました。薬の影響が気になる場合は、自己判断で変更せず処方医へ確認することが必要です。
症例問題|MRIで狭窄があると、今の症状はすべて狭窄が原因?
- MRI所見だけで、現在の症状の原因をすべて説明できる
- 午後に軽くなるため、神経学的所見は確認しなくてよい
- 画像所見に加え、症状の時間帯、歩行、筋力・感覚、生活背景などを合わせて確認する
- 痛みが軽くなれば、残っている感覚障害は確認しなくてよい
正解:C
画像所見は重要ですが、現在の症状との関係は、症状が出る時間帯、歩行での変化、筋力・感覚などの神経学的所見、姿勢・動作、生活背景と合わせて確認する必要があります。改善した所見と残った所見を分け、安全上の変化を継続してみることも大切です。
この症例から伝えたいこと
同じ診断名でも、症状の出方や生活への影響は一人ずつ異なります。この症例では、画像上の狭窄だけに結びつけず、朝に強い症状、歩くことでの変化、姿勢と歩行、筋力・感覚、冷感、生活背景を一緒に確認しました。結果を一般化せず、その方の状態に合わせて評価することが大切です。
このような変化があれば医療機関へ
筋力低下が新たに出る、または進行する、感覚障害が広がる、排尿・排便の異常や会陰部の感覚低下がある場合は、早めに医療機関での評価を優先します。片脚の強い冷感が悪化する、皮膚の色が明らかに変わる、足の脈が触れにくくなる、安静時にも強い痛みが続くなど血流障害を疑う変化がある場合も、医療機関での確認が必要です。急激な悪化、発熱、強い夜間痛がある場合も整体だけで経過をみません。
画像だけで決めず、症状の時間帯・動き・神経所見まで確認する
今回の症例では、MRIで脊柱管狭窄を指摘され手術の説明を受けていましたが、症状の時間帯や歩行での変化、神経学的所見、姿勢・動作、生活背景まで整理して対応しました。朝の痛みや仕事への影響、筋力、冷感には変化がみられた一方、感覚障害は残っていました。この経過は手術の要否を一般化するものではなく、変化には個人差があります。必要な医療評価を受けながら、現在の症状と機能を多角的に確認することが大切です。
「脊柱管狭窄症と説明されたが、今の症状との関係を整理したい」「症状の出る時間帯や歩き方、筋力・感覚まで確認したい」という方は、必要な医療評価を受けながらご相談ください。






